◇赤に教えた理由
ちなみに下書きの段階では、「7月14日 ブドウとじゃがいもは、同じ畑に生らない」の続きに、「私」と浅の会話が書かれていました。
『ねえ、赤。勝ちたかったのは、私だけだったのかな、頑張りたかったのは、私だけだったのかな、悔しいのは、私だけなのかな』
『それはないとおもうよ。運動部でさ、きっと気丈に振舞うしかないんだ』
地異は優しく言った。
(略)
『いつか負けると思っていた。いつか負けると思っていたよ。それが今とは思わなかったけれど』
『うん、』
『本当は、負けて欲しかったんだ。練習の時、負けて欲しかったんだ。そうすれば、エースも皆も、もっとやってくれる、って思ってた。でも、負けなかったし、たまに負けても、皆、本気じゃなかったよね、みたいな感じだったんだ』
赤は、ああ、と心当たりがあるように頷いた。
『でもしかたが無いんだよ。エースや永遠は、大会に全てをかけることは出来ないんだから。それについて、なにも言えない』
あまり深い意味は無いのですが、このやりとりがあると、「私」が赤に入れ込んだ理由に、赤の信念に打たれた以外の意味が強く加わり、結局「私」は帰属意識をもっていたことになってしまう、ので削った、ような気がします。
しかし「
裏切り者はエースの足を洗う」の最後で『エースや世紀や永遠が/危機感を持てば良いと思っている』のですから、やっぱりそういう気持ちはあったのでしょう。
要は、「私」は赤たち敵に強くなって、練習の段階で味方を負かして欲しいとも考えていたのです。
しかし皮肉にも味方は強く、負けることはありませんでした。
◇「彼女」のまわりを取り巻く人
「彼女」は大会とは関係が無い、と言いつつも、シロツメクサの話からも分かるように、「彼女」は星、船頭、心臓と親交があります。
だから「私」は味方である星と船頭との関係が、「彼女」に関することで崩れるのを危惧します。しかし、『自分の直感と、彼女の他人行儀。どちらを信じるべきなのか/知っている』ので、『見ていた友人達も、星も、気にしないようにした』と、その問題を被害妄想だということにして、他人行儀な「彼女」を信じることにするのです。(皮肉にもそれは被害妄想ではなかったのですが)
ちなみに「私」がむやみに「彼女」を信じるように努力して、知らない振りをすることに拘っているのは、「戦争物語」(未完)であった出来事によるのですが、それもまたおいおい書いていくかと思われます。
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