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それでも君を*****。――別館

(日常とか解説とか)

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補:大会物語①


最後の球技大会のはなし。
大会物語と銘打ちながらも試合描写や練習風景は殆どありません。「私」とエース、永遠、世紀、三人の関係描写と、それぞれに関する心理描写が八割を占めています。


◇「彼女」と味方の関係性

あくまで味方は「彼女」とは別の場所での関係で、だから「彼女」に関する辛いことや悲しいことは考えなくてすむ、と思いきや、味方(「私」と同じチーム)と敵(他のチーム)の間がぎすぎすしだしてしまう。
「彼女」に関する辛さを忘れさせる場所になるはずの味方が、味方に関する辛さを忘れさせる場所としての「彼女」を必要とさせてしまい、結局味方に入れ込んでいる(と信じている)「私」は、味方たちの問題を知らない振りはできず、「彼女」に関する問題をなかったことにして、「彼女」をまた支えにしてしまうのです。

「妄信物語」で、『私は彼女のことを愛してなどいなかった』『他人行儀が好きなくせに、近付いてしまった』と言いながらも、何かと味方や敵の話を「彼女」にしているのはきっとそのためです。そんなわけで、厳密に言うと「妄信物語」の後半は「大会物語」に入るのですが、「妄信物語」のラストに繋げるために敢えて「大会物語」に入れていません。

読むと分かるように、「彼女」は大会に全く関わっていません。味方(「私」と同じチーム)でもありません。だからこその不干渉であり、不干渉ゆえに「戦争物語」と全く同じ現象が起こったのです。


◇「ありがとう」の理由

夏物語に入りながら何故か更新された「7月17日 過去の清算」は、「私」の大会に対する印象のまとめ的な役割を果たしています。その中での問い『何故口をついたのが感謝の言葉だったのか』の答えが、『誰も責めないのなら/私だけでも/私を責め』させるのですが、答えは明示されていません。

「妄信物語」で、東と話した翌日、世紀が「私」に笑顔で手を振ったのを見た「私」は、東のことが知られたのだろうか、何故他人行儀じゃないのか、といたずらをした後の子供みたいな様子です。世紀はおそらく今までと態度を変えていません。が、「私」はうしろめたいことがあるので疑心暗鬼なのです。
文中で明言されていない東との話は、味方に関するものだったのではないでしょうか。味方に対する悪意は無いものの、自分の知らないところで話をされるのは嫌かもしれない、ということですね。(戦争物語参照)

「ありがとう」がエースの「頑張って」に対する「ありがとう」という意味であること、赤や東の話、何故味方に関する話を、味方でなく東としたのか。それらを合わせれば、『何故口をついたのが感謝の言葉だったのか』の答えは「帰属意識の低さ故」でしょう。

味方に入れ込んではいたものの、自分がシュートを決められるとは思っていない、エースや永遠がいるから、自分は勝敗に関わらない――そう思っていた(実際練習の時は事実だった)けれど、実際本番になって強い相手に当たってみると、全員が頑張らなくてはいけない。でも「私」はエースの思いを受け損ねて、何も出来なかった。常に自分が世紀に訴えていたことを、自分が出来なかった。でも誰も責めない。そもそも、誰も気づかない――だから「私」は髪を切ったのです。

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