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それでも君を*****。――別館

(日常とか解説とか)

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短編:伝える


好き。好きだよ。愛してる。
不特定多数に発せられる言葉。よくそんな恥ずかしいことが言えるな、と初めのころは思っていたが、どうやら女子という生き物の間でそんなことは日常茶飯事らしい。ほら今だって、好きだよ、と言われたほうもにっこり笑ってありがとう大好き、なんて言っている。女子という奴らの間で使われる「好き」は、もしかしたらおれの使ってきた「好き」とは全く別の意味を持っているのかもしれない。それを話したら、「そいつは間違ってるよ、意味は同じさ。あいつらの『好き』は所謂コミュニケーションツールってやつなだけで」。――とにかくおれは、女子ってやつがよくわからない。好きだなんて、ほいほい使って良い言葉じゃないだろ。

今日もまた言っている。好きだよ。好き。
やれやれ、といった心持ちで視線だけそちらへやると、どうやら様子がおかしい。好きと言った方は、シャープペンを止めてノートの上をじっと見ている。ノートの上の字も、ノートも、机も通り越して、椅子に座った自分の膝を見ているんじゃないかと思った。好きと言われたほうは、ノートの上にさらさらと何かを書いている。そして、ノートから目を離さないまま言った。ありがとう、私も好きよ。はじめに好きと言った方は、それを聞いて安心したような、がっかりしたような、そんな複雑な表情で視点をノートの上に持ってきた。

「好きだ」なんて、本当に好きな人以外には言うものじゃないな、と思った。

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